このチェアを復活生産させたことで、PP Møblerは2002年にインテリア雑誌Bo Bedreのクラシック・アワードを受賞しました。その特徴的なデザインもさながら、基礎に木材を使用する従来のウェグナーのモデルとは違った作品です。このチェアでウェグナーはル・コルビジェ、ミース・ファン・デル・ローエ、マルセル・ブロイヤーといったモダニズムの先駆者に敬意を表すとともに、彼自身もフレームにクロームスチールを使用したデザインをマスターしていることを証明したのです。そのようなパフォーマンスがあったとはいえ、これはウェグナーの作品には変わりありません。チェアの平面にはハリヤードを使用、その上に敷かれたシープスキンがスチールの工業的なイメージを和らげ、快適な座り心地をつくりあげています。しかしながら、このデザインの背後にも美術史からの観点を超えるものがあります。ウェグナーはこのチェアの座面部のデザインアイデアをオーフスでの休暇のときに思いつきました。家族で長期間、浜辺に足を運び、その砂の中に体をうずめることで座面部の形を研究したのです。こんな秘話からもウェグナーの頭には常に仕事があったこと、また遊び心が彼のデザインの中心に存在していることがお分かりいただけるでしょう。